趣旨
酒類が製造場から移出されるときは、原則として、酒税の納税義務が発生ことになるが、一旦製造場から移出された酒類であっても、直ちにそれが消費面に流れず、他の酒類の原料として使用される場合がある。このように、まだ消費のための流通過程に入らない段階において酒税を課税することは、消費税本来の建前から好ましくないため、移出時課税の原則に対して例外規定を設け、酒類を所定の手続に従ってその製造場から移出するときは、その移出した酒類に対する酒税を免除することにしている。
1 適用要件 (法28①)
酒類製造者が、次のそれぞれに掲げる酒類をその酒類の製造場から次のそれぞれに掲げる場所((1)②~⑨までに掲げる酒類の蔵置場については、当該蔵置場につき、その蔵置場の所在地の所轄税務署長の許可を受けた蔵置場に限る。)へ移出する場合には、その移出に係る酒税を免除する。
(1)事後申告制度によって未納税移出をすることができる場合(法28①、令2、規9)
① 酒類製造者が酒類の原料とするための酒類 …当該酒類をその原料とする酒類の製造場
② 輸出業者が輸出するための酒類 …当該酒類の蔵置場
③ 自己の他の酒類製造場又は蔵置場に移入するための酒類 …当該酒類の製造場又は蔵置場
④ 他の酒類製造者の酒類の製造場又は蔵置場に移入するための酒類のうち次に掲げるもの …当該製造場又は蔵置場
イ 当該他の酒類製造者がその移入をした後その商標を表示してさらに移出することが明らかなもの
ロ 当該他の酒類製造者が容器に詰めることを委託され、その委託した者の酒類の製造又は蔵置場へさらに移出することが明らかなもの
ハ 滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続又は破産手続による換価に係る酒類の製造場から移入するその換価に係るもの
⑤ 酒類製造者が主となって組織する法人の(酒類製造者である法人を除く。)の酒類の蔵置場に移入するための酒類のうち次に掲げるもの …当該蔵置場
イ その法人を組織する酒類製造者の酒類の製造場又は蔵置場から移入するもの
ロ イに規定する酒類製造者以外の酒類製造者の酒類の製造場又は蔵置場から移入するもので、その法人がその移入をした後その商標を表示してさらに移出することが明らかなもの
ハ イに規定する酒類製造者以外の酒類製造者の酒類の製造場か又は蔵置場から移入するもので、その法人が容器に詰めることを委託され、その委託をした者の酒類の製造場又は蔵置場へさらに移出することが明らかなもの
⑥ ④ロ又は⑤ハの委託に基づき容器に詰められた酒類をこれらの委託を受けた者の酒類の製造場又は蔵置場からこれらの委託をした者の酒類の製造場又は蔵置場に移入するためのもの …当該製造場又は蔵置場
⑦ 酒類製造者が主となって組織する法人の酒類の製造場に⑤イの規定の適用を受けて移入した酒類をその蔵置場からその法人を組織している酒類製造者の酒類の製造場又は蔵置場に移入するためのもの(④に該当するものを除く。) …当該製造場又は蔵置場
⑧ 未納税移出の規定の適用を受けて酒類の製造場又は蔵置場から移出した酒類をその製造場又は蔵置場に戻し入れるためのもの …当該製造場又は蔵置場
⑨ 果実酒を集荷して移出する者の蔵置場に移入するための果実酒
(2)事前承認制度によって未納税移出をすることができる場合 (法28①四)
(1)に掲げる酒類以外の酒類で、その酒類を他の製造場又は蔵置場へ移出することにつき、その酒類の製造場の所在地の所轄税務署長の承認を受けたもの …当該製造場又は蔵置場
2 未納税移出をした酒類製造者の手続
(1) 原則手続 (法28②)
未納税移出の規定は、移出をした酒類製造者が、その移出をした日の属する月分の納税申告書(期限内申告に限る。)にその酒類が未納税移出適用酒類に該当すること及びその酒類が所定の移入場所に移入されたことについての明細を記載した書類を添付しない場合には適用しない。
(2) 延期手続 (法28③)
やむを得ない事情があるために(1)に規定する書類を(1)の申告書に添付することができないときは、その書類は、次のそれぞれに掲げる区分に応じ、それぞれに掲げる日までに提出すれば足りるものとする。
① 酒類製造者が、その書類をその申告書の提出期限から3月以内に提出することを予定している場合において、その予定日をその申告書の提出先の税務署長に届け出たとき。 …その予定日
② 酒類製造者が、その書類をその申告書の提出期限から3月を経過した日以降に提出することを予定している場合において、その申告書の提出先の税務署長の承認を受けたとき。 …その税務署長が指定した日
(3) 亡失手続 (法28④)
未納税移出をした酒類を所定の移入場所に移入する前に、災害その他やむを得ない事情により亡失した場合において、その亡失の場所の最寄りの税務署の税務署長に亡失の事実を届け出て、その税務署長から亡失証明書の交付を受けたときは、その証明書は(1)に規定する書類に代えて用いることができる。
3 未納税移入をした酒類製造者の手続等
(1) 移入者の提出書類 (法28⑦)
未納税移出をした酒類を所定の移入場所に移入した者は、その酒類の移入の目的、税率の適用区分及びその区分ごとの数量その他一定の事項を記載した書類をその場所の所在地の所轄税務署長に、その移入をした日の属する月の翌月末日までに提出しなければならない。
(2)みなし規定 (法28⑥)
未納税移出をした酒類については、その酒類を所定の移入場所に移入した者がその酒類の酒類製造者でないときは、これをその酒類の製造者とみなし、その場所がその酒類の製造免許を受けた製造場でないときは、これをその酒類の製造免許を受けた製造場とみなす。
4 未納税移出の手続の特例
移出者の手続の特例 (法28の2①)
未納税移出をした酒類の移入場所が、次のそれぞれに掲げる場所に該当する場合において、未納税移出をした酒類製造者が、その酒類につき、その移出をした日の属する月分の納税申告書(期限内申告に限る。)に未納税移出をした酒類の税率の適用区分及びその区分ごとの課税標準たる数量を記載し、かつ、その酒類が未納税移出酒類に該当すること及びその酒類がその場所に移入されたことについての明細を帳簿により明らかにしているときは、2(1)に規定する書類の添付を要しない。
① 未納税移出酒類の移出をした者と移入をした者が同一である場合におけるその移入をした場所
② ①の規定にがいとうするもののほか、継続的に未納税移出酒類が移入される場所で、その酒類の移出をする製造場の所在地の所轄税務署長の承認を受けたもの
(2)移入者の手続の特例 (法28の2②)
未納税移出をした酒類の移入場所が、未納税移出をした酒類を継続して移入する場所であり、かつ、その酒類を移入する者が、その場所の所在地の所轄税務署長の承認を受けたときは、3(1)に規定する書類の提出を要しない。
用語の意義
(1) 酒類製造者とは、酒類の製造免許を受けた者をいう。
(2) 輸出業者とは、他から購入した酒類の販売を業とする者で常時酒類の輸出を行うものをいう。